最近話題の「短鎖脂肪酸」って、なにがそんなにすごいの?
こんにちは。onakademy編集部です。
皆さんは「短鎖脂肪酸」という言葉をご存知でしょうか。これまでアップしてきた記事にも短鎖脂肪酸の話はたびたび出しているので、onakademyをウォッチしてくださっている方や、腸活上級者の方にとっては身近な言葉かもしれません。
腸内細菌は様々な健康状態や疾患と関連することがこれまでの研究でわかっていますが、以前公開した記事でも述べた通り、存在するだけではヒトに影響を与えないことが多く、主に短鎖脂肪酸などの代謝物質を介して健康効果をもたらします。それゆえ、宿主であるヒトの健康にとって短鎖脂肪酸は非常に重要な物質なのです。
今回の記事では、「短鎖脂肪酸ってなんなの?」という基本的な部分から、これまでに報告されている健康機能まで、短鎖脂肪酸の実態を紐解いていきます。
短鎖脂肪酸って?
腸内細菌は水溶性食物繊維やオリゴ糖などをエサとして様々な代謝物質を作ってくれます。短鎖脂肪酸はその代表格の一つで、腸内では主に酢酸・プロピオン酸・酪酸が腸内細菌によって作られています。
大腸で腸内細菌によって作られた短鎖脂肪酸を含む代謝物質は、腸管から吸収されると血中に取り込まれます。取り込まれた短鎖脂肪酸は血流に乗って全身へ移行するため、全身の健康に影響を与えてくれます。
全身の様々な細胞の表面には短鎖脂肪酸専用の「受容体」と呼ばれるタンパク質が存在しています。受容体は短鎖脂肪酸のセンサーのようなもので、短鎖脂肪酸が結合することで細胞が様々な応答をし、それが結果的に健康効果をもたらしてくれるのです。
例えば、GPR43という短鎖脂肪酸受容体があります。GPR43は全身の脂肪細胞などに発現しています[1]。このGPR43に短鎖脂肪酸が結合すると、様々な腸管ホルモンが分泌されることで、食欲を調節したり、肥満を抑制したり、血糖値の増加を抑えてくれたりするのです[2]。
短鎖脂肪酸はビジネスパーソンに嬉しい効果がたくさん報告されている!
唐突ですが、忙しい毎日を送るビジネスパーソンの皆さんは、こんな思いを抱えていませんか・・?
「ちゃんと寝ても疲れが取れない・・」
「若い頃と比べて体力が格段に落ちているのを実感する・・」
「ちゃんと食事には気をつけているのに、最近太ってきた・・」
そんなあなたに朗報です。
腸内環境を改善して、腸内細菌に短鎖脂肪酸を効率的に作らせることできっと未来のあなたに感謝されることでしょう。
なぜなら、ビジネスパーソンに嬉しい効果が短鎖脂肪酸にはたくさん報告されているからです。
その代表例をあげると、短鎖脂肪酸には以下のような効果があることが報告されています。
抗肥満効果
睡眠の質向上
持久力向上
糖尿病の改善
肌質の改善
便通改善
上記の中でも今回は抗肥満効果について、お話しします。
短鎖脂肪酸で太りにくい体を作る!
Jefferey Gordonというアメリカの微生物学者が2006年に腸内細菌と肥満との関係を明らかにし、Natureという生物学で権威のある雑誌に論文を投稿しました。
その論文では、無菌マウス(無菌状態で飼育され、腸内細菌がいないマウス)に肥満のマウスの腸内フローラを移植したところ、普通のマウスと同じ食事をさせていたにも関わらず、マウスが肥大化したという内容を発表しました[3]。
同年に発表された論文では、肥満のヒトとそうでないヒトの間では腸内フローラが異なることもわかり[4]、研究が進むに連れ腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が脂肪の蓄積を抑えてくれたり、食欲を制御してくれることがわかってきたのです[5][6]。
日本人に多いBlautia wexlerae(ブラウティア・ウェクスレラ)という菌に抗肥満効果があることも近年報告されました[7]。
マウスに高脂肪食と当該菌を同時に摂取させたところ、内臓脂肪の蓄積と体重の増加が抑制されました。また、高脂肪食を与えたマウスは糖尿病症状を示しましたが、この菌の摂取によってこれらの症状も改善する結果が得られたのです。
短鎖脂肪酸には他にも数々の健康効果が報告されていますが、他の領域に関してはまたの機会にご紹介できたらと思います。
短鎖脂肪酸を増やすにはどうしたらいいの?
短鎖脂肪酸が健康にいいことは明らかになってきました。
では、その短鎖脂肪酸を増やすにはどうすればいいのでしょうか。
一番手っ取り早い方法としては、日々摂取する食物繊維の種類と量を増やすことです。
腸内細菌は水溶性食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスをエサとして短鎖脂肪酸を作ってくれますから、そのエサを与えてあげることが大切です。
水溶性食物繊維が多く含まれる素材としては豆類、穀類、きのこ類、海藻などが挙げられます。これらの素材を満遍なく、日々の食事に取り入れてみてください。
ここでポイントです。一度に摂取する量ではなく、継続して摂取し続けることを意識してみましょう。
腸活が実を結ぶまでには時間がかかります。無理のない腸活が健康への近道です。
気楽に取り組んでみましょう。
参考文献
[1] Kimura et al., Nat commun. 2013;4:1829
[2] Shah and Vella. Rev Endocr Metab Disord. 2014;15(3): 181–187.
[3] Turnbaugh et al. Nature. 2006;444(7122):1027-31
[4] Ley et al., Nature. 2006; 444(7122): 1022–1023
[5] Kimura et al., Nat Commun.2013;4:1829
[6] van de Wouw et al., J Nutr. 2017;147(5):727-745
[7] Hosomi et al. Nat Commun. 2022;13(1):4477