短鎖脂肪酸
腸内細菌が作り出す代謝物質の代表格で、腸内環境研究の分野では酢酸、プロピオン酸、酪酸を指します。大腸に到達した未消化物(主に食物繊維やオリゴ糖)を腸内細菌が代謝することで産生され、腸管から再吸収されることで全身をめぐり、全身の様々な健康効果などに寄与するとされています。また、腸管ホルモンの分泌を促進するほか、腸内のpHを調整し、有害な菌の増殖を抑えることにも貢献しています。
腸管で再吸収された短鎖脂肪酸は、血中を通り全身に到達します。そのため、腸以外の臓器である脳や肝臓、また全身にも作用し、様々な健康効果をもたらすと言われています。抹消組織においてGPR41(FFAR3)、GPR43(FFAR2)、GPR109aなどのGタンパク質共役型受容体(GPCR)と結合することで様々な健康効果をもたらすことが知られています。報告されている健康効果には抗肥満効果、便通改善効果、免疫賦活化などが挙げられます(図1)。
例えば、短鎖脂肪酸が腸内分泌細胞のL細胞に発現しているGPR41やGPR43に結合すると、PYYやGLP-1といった腸管ホルモンの分泌を促進することで肥満を抑制します。
様々な健康効果が報告されている短鎖脂肪酸を効率的に増やすには、腸内細菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を十分に摂取することが必要になります。
参考文献
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