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腸を整えれば、春はもっと優しくなる。
こんにちは、オウンドメディア編集部です。
2025年も既に1ヶ月が経とうとしています。早いですね。。
関東圏では既に、春が顔を出しつつあるみたいですね。花粉が飛び始めていると周りからちらほら声を聞くようになりました。
今回は、この季節から多くの人を悩ませる「花粉症」についてお伝えしようと思います。
昨年末には、onakademyで免疫の話をしました。
免疫は体に入ってくる異物と戦ってくれるシステムで、腸内細菌は免疫のサポートをしてくれているのでしたね。
この免疫と腸内細菌は、花粉症の発症や制御にも深く関わっているのです。
アレルギーのメカニズム
花粉症についてお話しするには、まず「アレルギー」について語らなくてはいけません。
以前の記事でもお話しましたが、免疫とは文字通り「疫」から「免れる」システムのことで、感染症やウイルスなどから体を守ってくれる仕組みです。
免疫は本来、ウイルスや病原菌など私達に害を与えるものを排除する仕組みですが、花粉やハウスダストなど、直接害をもたらさないような異物に対して、過剰に反応してしまうのがアレルギー反応です。これにより、喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどが起こってしまいます。
アレルギーには、免疫細胞の一種であるB細胞、B細胞を活性化させるTh1細胞・Th2細胞、B細胞がつくりだす抗体が関わってきます。
Th1細胞は細菌やウィルスなどに対して反応し、Th2細胞はダニやカビ、花粉などに反応してサイトカインという物質を分泌します。
また、抗体にはいくつか種類があり、役割が異なります。アレルギーやその制御に関連する抗体は以下の2つです:
IgA:粘膜面で病原体の体内への侵入をブロックし、感染症予防に重要な役割を担う
IgE:アレルギーの発症にも関与
通常はTh1・Th2のどちらかが過剰にならないようそれぞれがつくり出すサイトカインがお互いのはたらきを抑制しあい、バランスを保っています[1]。これをシーソー理論と呼ぶこともあります。
しかし、アレルギー体質の人やアレルゲンに多く暴露されるような状況ではTh2細胞のはたらきが過剰になってB細胞によるIgEの産生量が過剰になり、アレルギー症状が出てしまいます。
産生されたIgEは血中を周り、全身にある「肥満細胞(マスト細胞とも呼ばれる)」という細胞に結合すると、アレルギーの炎症反応を引き起こす「ヒスタミン」という物質が肥満細胞から放出されます。
このヒスタミンが鼻や目の細胞において炎症を促進することで、鼻水やくしゃみ、目の痒みなどが引き起こされてしまうのです。
余談ですが、私自身もアレルギー体質ではあるのでよく調べたりするのですが、以前は「アレルギーコップ」という別の考え方が主流でした。
ヒトは皆コップを持っており、そこにストレスや環境汚染、食生活の乱れなど、アレルギーの発症に起因するような要素が入っています。アレルゲンへの暴露などによってそのコップが溢れてしまうとアレルギーを発症する、という考え方ですね。
アレルギー体質の人はそのコップにもともとアレルギー体質という要素が追加されてしまうので、アレルギーが出やすいということのようです。
子供の頃はアレルギーではなかったのに、大人になって発症した、という話はよく聞きますが、ストレスや環境の変化などによりコップが溢れやすくなってしまった結果、アレルギーを発症してしまった、ということなのかもしれません。
ただ、アレルギーの治療には少量の花粉を投与して体を慣れさせ、症状を緩和するという舌下免疫療法と呼ばれる治療法がありますが、「アレルギーコップ」の考え方では具体的な免疫学的メカニズム(舌下免疫療法がなぜ効くのか)を十分には説明しきれないため(アレルギーコップ理論も間違っているわけではないようですのであしからず)、最近ではTh1とTh2のバランスに基づく、前述したシーソー理論が主流になってきているようです。
腸内細菌が免疫の制御役を教育してくれる
これまでは花粉症のメカニズムの話をしてきました。では、腸内細菌はここにどのように関わってくるのでしょう。
以前の記事でも話した通り、免疫細胞には、他の細胞の働きを抑えてくれる細胞がいます。
これが制御性T細胞(Treg)と呼ばれる細胞です。
Tregはサイトカインという化学物質を放出して、IgEの産生を抑えてくれます。
このTregの産生に関わっているのが腸内細菌なのです。
腸内細菌は大腸で、食物繊維をエサとして「短鎖脂肪酸」を作ってくれます。
多くの免疫細胞の多くは小腸で成長し、機能を獲得していくのですが、短鎖脂肪酸は小腸でのTregの成長を促進してくれることが知られています[2]。
実際に、腸内細菌や短鎖脂肪酸とアレルギーの関連は多数報告されています。
例えば、抗生物質によって腸内細菌叢が乱れてしまうとアレルギー性の鼻炎が悪化することが分かっています[3]。逆に、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスを摂取すると便中の短鎖脂肪酸が増加し、IgEが減少すると同時にアレルギー性鼻炎が改善することも報告されています[4]。
アレルギーに悩んでいる人は、腸内細菌のエサとなる食物繊維を十分に摂取できているか、今一度見直してみましょう。厚生労働省によると、成人では一日あたり男性で21g、女性で18g以上の食物繊維摂取が推奨されています[5]。この値を目安に摂取するといいでしょう。
しかし、腸内細菌によって好き嫌いがあることも分かっています。一つの食物繊維を多量に摂取するよりは、多様な食物繊維を満遍なく取れるよう、食生活を工夫してみてください。
参考文献
[1] Poulsen, L. K., & Hummelshoj, L. Triggers of IgE class switching and allergy development. Annals of Medicine, 39(6), 440–456 (2007).
Arpaia, N. et al. Metabolites produced by commensal bacteria promote peripheral regulatory T-cell generation. Nature 504, 451–455 (2013).
[2] Chen et al. Vancomycin-induced gut microbiota dysbiosis aggravates allergic rhinitis in mice by altered short-chain fatty acids. Front. Microbiol. 2022;13(1)
[3] Ido and Nagamine. The effect of prebiotic lactosucrose on serum IgE levels in allergic people: A pilot study in Japan. Intern. Med. J. 2018;25:389-390
[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会、日本人の食事摂取基準(2020年版)、第一出版,2020.