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腸内環境と免疫の関わりについて(前半)

こんにちは、onakademy編集部です。
11月も下旬に入り、だいぶ気温も下がってきました。
筆者が住んでいる山形県鶴岡市では、先日初雪も観測されました。

まだ冬タイヤ買ってないのに。。と内心めっちゃ焦っている今日このごろです。

急激に気温が下がると、体調を崩さないかとヒヤヒヤしますよね。

ご安心を。

こういうときにも身体は自身を守るためのシステムを備えています。

そのシステムの名前は「免疫」

言葉は皆さん聞き馴染みがあるかとは思いますが、その仕組みについて詳しく知っている方は少ないかもしれません。
さらに、免疫と腸内環境が密接に関係していることをご存知でしょうか?

今回から2回にわたり、免疫の仕組みと腸内環境との関係を解説していきます。前半では「免疫とはどういうものなのか」をお伝えします[1]。


免疫は身体の「警備システム」

私たちの身体は、毎日見えない敵 - 病原菌やウイルスと戦っています。それらが体内に侵入すると、様々な不調を引き起こしますが、そんなときに立ち上がるのが「免疫」という体内の警備システムです。

たとえば風邪をひいたとき、熱が出たり鼻水・咳が出たりしますよね。これらは免疫がはたらいている証拠です。

発熱は体温を上げて免疫細胞を活性化し、ウイルスを弱らせる反応です。同様に、鼻水や咳は鼻腔、口腔に入り込んだ異物を体外に排出するための反応なのです。

自然免疫と獲得免疫の2本柱

免疫の仕組みは大きく2つに分かれます。「自然免疫」と「獲得免疫」です。

自然免疫:即時対応型の防御

自然免疫は、生まれながらに備わった防御システム。異物が侵入すると、すぐに免疫細胞たちが攻撃を開始します。

主役となるのは以下の細胞たちです。

  • 好中球・マクロファージ:異物を見つけて飲み込み、分解する。これらは合わせて「貪食細胞」と呼ばれる

  • NK細胞:がん細胞やウイルス感染細胞を排除する

自然免疫はさながら、建物を巡回する警備員のような働きを担っています。血管内をかけまわり、異物や不良細胞を除去してくれます。

獲得免疫:学習型の防御

自然免疫だけでは対応できない場合に、獲得免疫が活躍します。このシステムは自然免疫よりも組織的に異物を排除してくれます。

それだけでなく、獲得免疫は「記憶」を持ち、一度遭遇した病原体を次回から効率的に排除します。

獲得免疫の中心となるのは以下の細胞たちです。※

  • ヘルパーT細胞:異物の情報を受け取り、他の免疫細胞に指示を出す

  • B細胞:抗体を作り、異物を攻撃する

  • キラーT細胞:がん細胞やウイルス感染細胞を排除する

※ ヘルパーT細胞はさらに機能別に細分化されますが、すこし難解な話になってくるので、詳しい話はまた別の機会にお話できればと思います。

自然免疫の細胞(主にマクロファージ)には、取り込んだ異物の一部(抗原)を ヘルパーT細胞に渡す「抗原提示」という仕組みが備わっています。

抗原提示を経て、ヘルパーT細胞は活性化します。活性化したヘルパーT細胞は、B細胞の一種である「形質細胞」という細胞に指示を送り、抗体の産生を促します。

抗体には病原菌やウイルスの毒性物質を中和したり、自然免疫の貪食細胞の活性を増加したりするなど、様々な働きがあります。

この抗体は腸内環境と免疫の話をするうえで欠かせないキープレイヤーになります。後半で詳しく触れますので、「抗体」という単語をぜひ覚えておいてください。

そのほか、ヘルパーT細胞によって活性化されたキラーT細胞がNK細胞同様、がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃し、排除します。

抗体やキラーT細胞によって病原菌やウイルスなどの異物や不良細胞が排除され、身体に平和が戻ってくるのです。


免疫の種類と免疫細胞の役割

免疫記憶とワクチン

B細胞の一部は「記憶細胞」というものに形を変え、脅威が去ったあとも身体に残り続けて排除した異物の情報を記憶しています。

そうすることで、次に同じような異物が身体に入ってきても、迅速に取り除けるようにするのです。

これを「免疫記憶」と呼びます。

ちなみに、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の予防のために接種するワクチンは、この免疫記憶を利用しています。

私達が本物のウイルスに感染する前に無毒化・弱毒化したウイルスを使って記憶細胞に情報を記憶させることで、身体が本格的なウイルスの侵入に備えることができるのです。

そのため、ワクチンをうつとウイルスに感染しても重症化が抑えられるというわけです。


ワクチンのしくみ

次回予告:腸内環境と免疫の深い関係

免疫細胞の活性に関わる分子等の話は省きましたが、ざっくりとした免疫の仕組みは理解できたでしょうか。

免疫に関わるキープレイヤーである抗体。

この抗体を効率的に作り出すのに重要な役割を持っているのが腸内細菌の働きなのです。また、一部の免疫細胞の分化にも関わっていることがわかっています。

次回の記事では、「腸内環境と免疫の関係」に焦点を当ててお話しします。

ぜひお楽しみに!

参考文献

  1. Parkin J, Cohen B. An overview of the immune system. Lancet 357(9270), 1777-1789 (2001).

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