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「良い腸内環境」ってなんだろう?

こんにちは、onakademy編集部です。

先日は腸内環境とはなにか、について記事をアップしましたが、近年、健康志向の高まりやメディアへの露出などにより、腸内環境およびその重要性は認知度が上がってきています。

では、皆さんこのような質問にはどう答えますか?

どういう腸内環境を目指せばいいのか?
どういう腸内環境が「良い」腸内環境と言えるのか?

両方の質問に対してスラスラと説明できた方は少ないんじゃないでしょうか。

今回は、腸内環境の良し悪しを決める指標や考え方について、最新の科学的知見も踏まえて解説していきます。




良い腸内環境の指標は現時点で明確に定義されているわけではない


この見出しをみて、「え・・?」と思った方もいるでしょう。

実は健康診断のように科学的に「こういう腸内環境が『良い』」と現時点で一義的に定義されているわけではないんです。

その理由として、腸内環境はその宿主である人間の生活環境やライフスタイルに大きく依存しているため、良い腸内環境は人によって異なること。加えて、腸内環境に関する研究は日進月歩であるもののまだまだわからないことがたくさんあること、の2点があります。

とはいえ、多くの研究者の共通認識として、こういう腸内環境が良いのではないか、と考えられている指標がいくつかあります。

良い腸内環境の指標

腸内フローラの多様性
短鎖脂肪酸の産生量
腸管バリアの頑健性

まずひとつめは、「腸内フローラの多様性」です。

腸内フローラの多様性とは、「異なる種類の腸内細菌が何種類くらい腸内に生息しているか」を指す言葉です。

ありきたりな表現に言い換えると、「いろんな腸内細菌がいるのか。数種類の腸内細菌が大半を占めていないか」


なぜ多様性が重要になってくるのでしょう。

それは、腸内細菌には人間よりもはるかに極端な食べ物の好き嫌いがあるからです。

色んな種類の腸内細菌がいれば、いろんな食べ物を食べたときに健康に寄与する代謝物質(主に短鎖脂肪酸)を作ってくれます。いくら食物繊維をたくさん摂取しても、それらを代謝できる腸内細菌がいなければその効果を十分に得ることができません。

多様性は、腸内環境と健康との関連を調べている研究ではよく評価される指標の一つです。健常人と疾患患者を比べると、後者では多様性が低いことが多くの研究で報告されています。

多様性が高くても健康とは一概に言えないケースもありますが、基本的には多様性は高く保っておくことが大切だと言えるでしょう。

また、先述した短鎖脂肪酸」がどの程度産生されているか、というのも良い腸内環境の指標となってくるでしょう。もちろん、一部の腸内細菌は腸内にベタッと接着したり、細胞膜などの腸内細菌の構成成分が免疫細胞に認識されることで、免疫機能を活性化したりすることも報告されています[1][2]。

しかし、多くの腸内細菌の有用性は、食物繊維などをエサとして短鎖脂肪酸を腸内で作り出してくれるところにあります。

短鎖脂肪酸は腸内で、細菌やウイルスの攻撃から身体を守ってくれる抗体の一種であるIgAの産生を惹起するなどして免疫を活性化してくれます。また、腸管から吸収されると血中を介して全身にまわり、肥満や糖尿病の抑制など様々な健康効果をもたらしてくれます。

短鎖脂肪酸を増やすには、腸内細菌がエサとするプレバイオティクスを日常的に摂取するように心がけるといいですね。

3つめの指標として、「腸管バリアの頑健性」があります。

大腸を含む消化管は、ホースやちくわのように一つの管の構造をしています。そのため、腸管内は体内ではあるものの、環境としては「体外」なのです。


腸管を含む消化器官は「体外環境」にさらされている

腸管バリアとは、そんな体外と体内を隔てる一層の細胞で構成された薄いバリアのような防御壁のことです。

普段は異物から体内を守ってくれる腸管バリアも、腸内細菌の乱れや外的ストレスなどによってその構造が破綻してしまうと、細菌や毒素などの異物が腸内(体外)から体内に漏出し、炎症などの原因となってしまいます(腸内ではいい影響をもたらしてくれる腸内細菌も「体内」に入ると「異物」になります)。

多様性と同様に、疾患患者ではこの腸管バリアが崩れていることが報告されています[3]。

良い腸内環境の指標まとめ

腸内フローラの多様性が高いか
短鎖脂肪酸が十分に作られているか
腸管バリアの頑健性があるか


まずは腸内環境の「現在地」を確認するべし!


以上が現時点で考えられている科学的な観点からの「良い腸内環境」の指標です。

「腸内フローラの多様性が高く、短鎖脂肪酸が十分に作られており、腸管バリアの頑健性が保たれている」のが理想

というわけですね。

昨今では一般向けに販売されている腸内環境検査キットも増えてきており、腸内環境を見える化する手法も発展してきています。
まずは自分の腸内環境の現状がどうなっているのかを知ることが大切です。

検査結果が返却されると、腸内フローラの多様性や短鎖脂肪酸を作る菌がいるのかなど、今のあなたのお腹の情報を得ることができます

それらの情報があって初めてどうお腹と向かい合っていけばいいか、方針が見えてきます。

現状の食生活を維持するべきなのか。ある特定の短鎖脂肪酸産生菌を増やすべきなのか。はたまた摂取する食物繊維の種類を増やすべきなのか。

試行錯誤しながら、その中でも楽しみながら腸内環境の改善に取り組めると良いですね。腸内環境が改善していくと、より見えやすい部分にも変化が出てくるかと思います。

日々のお通じや肌質、風邪の引きやすさなど、これらの「体感」が変わってくれば腸内環境が変わってくれている証拠です。

「最近便秘気味だなぁ・・」
「メイクの乗りが悪いかも・・?」
「風邪を引きやすくなった気がする・・」

などと思ったら、腸内環境の乱れを疑ってもいいかもしれません。


あなたのお腹の現在地を知る、その情報を軸に腸活を行う、効果が出ているか体感で確認

これの繰り返しであなたの求める腸内環境に近づいていくはずです。

お腹の調子や体調に不安を抱えているあなたにこそトライしてみてほしいと思っています。


ハードルが高い。。そう感じる人は


まずは検査キットで検査をしてみるのを強くオススメします。

やるべきことはわかった、でもやっぱりハードルが高い。。。

そんな方もいることでしょう。そんなときはとりあえず、短鎖脂肪酸が十分に作られるような腸内環境を目指してみてください

先述した通り、有益な腸内細菌がいることも大事ですが、腸内細菌が作り出す「短鎖脂肪酸」が様々な健康効果をもたらしてくれることがこれまでの研究でわかっています。また、多くの研究者や企業も短鎖脂肪酸の健康効果に着目し始めています。

さらに、あなたのお腹に棲み着いている腸内細菌はあなたの食生活に適応したいわばエリートたちです。そのような環境にテコ入れして菌の多様性を高めるのはなかなかハードルが高いのもまた事実です。まずは現状のあなたの腸内細菌に頑張ってはたらいてもらうことで健康を目指すほうが理にかなっています。

そういう意味で、短鎖脂肪酸を増やす。これに取り組んでもらえたらと思います。

短鎖脂肪酸を増やすには、様々な種類の水溶性食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスを日常生活に取り入れてみましょう。腸内環境と体感はリンクしていることが多いので、腸内環境が上向きになれば、体感としても現れてくる可能性が高いです。

ここで一つアドバイスを。腸内環境は残念ながら、数日取り組んで改善するようなものではありません。気長に、自分に取り組みやすいペースで向き合うことが大切です。まずは2週間、同じプレバイオティクスを摂取してみることをおすすめします。

プレバイオティクスを長期間食べてはいるけど体感がない、という人は、摂取する種類を変えてみましょう。もしかすると、それはあなたの腸内フローラにはあってないのかもしれません。

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今後も、腸内環境の重要性や腸内環境の可能性を最大化していくヒントなど、皆さんに有益な情報をできるだけわかり易く配信していきます。

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参考文献

[1] Atarashi et al., Cell. 2015;163(2):367-380
[2] Lee et al., FEMS Microbiology Reviews. 2023;47(4):fuad046
[3] Ghosh et al. Journal of the Endocrine Society. 2020; 4(2), bvz039


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