マガジンのカバー画像

研究室

7
腸内細菌の働きの詳しいメカニズムの説明や最新の腸内環境研究に基づく知見など、主に研究者や腸活玄人向けのストーリーを配信していきます
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

腸内環境単語帳

腸内環境にまつわる単語の説明をまとめていきます。随時更新していきますので、乞うご期待ください。  英数あ行か行さ行酢酸 食物繊維 た行短鎖脂肪酸 腸内細菌 腸内代謝物質 な行乳酸菌 は行ビフィズス菌 プレバイオティクス プロバイオティクス プロピオン酸 ま行や行ら行酪酸 わ行

腸がもたらす(かもしれない)記憶力のお話

腸内環境は脳と密接に関わっているということはこれまでの記事でも取り上げてきました。 そんな脳腸相関ですが、最近の研究で「記憶力は良い腸内環境によって育まれる」可能性が示されてきているのを知っていますか? お腹の調子を良くすると記憶力が良くなる、なんてことがあったら嬉しいですよね。 今日はそんな記憶力に関連する研究事例をいくつか取り上げていきたいと思います。 腸内細菌の存在は記憶力に影響するそもそもお腹にいる腸内細菌が記憶力に影響するなんてことはあるのか?と思う人もいる

健康長寿に重要な二次胆汁酸

腸内細菌だけではなく、腸内細菌によって作り出される代謝物質も重要だということはonakademyの記事でも何度か話をしています。今回の記事でも代謝物質に注目してお話したいと思います。 腸内細菌由来の代謝物質としては短鎖脂肪酸(Short-chained fatty acids; SCFA)がその主要なものですが、他の代謝物質、特に肝臓において作られ腸内に分泌された胆汁酸が腸内細菌によって代謝されることで産生される「二次胆汁酸」についてもその重要性が評価されてきています。

腸から若返る:腸内環境の老化、傾向と対策

“腸内環境の老化”とはメタボリックシンドロームや糖尿病、動脈硬化、慢性腎臓病などは高齢者に多く見られるため、加齢関連疾患と呼ばれます。これらの病気は、数年にわたって低レベルの炎症が続く「慢性炎症」が特徴です[1]。 最近の研究では、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸などの物質が、体内の炎症を抑え、加齢関連疾患を軽減する役割を果たすことが分かってきました[2]。では、そんな慢性炎症を抑える役割を持つ腸内細菌自体も、年齢とともに老化してしまうのでしょうか? もし老化した場合、何が起

リバウンドしないダイエットのカギは腸内細菌と二次胆汁酸にあり、という研究の話

ダイエットの大敵「リバウンド」におびえてますか? 減量後にはタンパク質と炭水化物の比率に気をつけタンパク質を多めに摂る[1]といった食事コントロールによるリバウンド対策も報告されていますが、今回は腸内環境に注目します。 二次胆汁酸とはまずタイトルにもある二次胆汁酸について。 二次ということは一次があります。一次胆汁酸はヒトの肝臓で作られる脂肪の消化を助ける物質で、それが腸まで流れていくと腸内細菌によって変換され二次胆汁酸と呼ばれるようになります。 これまで二次胆汁酸が過

バリウム検査は腸内細菌叢に悪影響を及ぼすのか?

こんにちは、onakademy編集部です。 毎年この時期になると、多くの方が健康診断を受けることと思います。健康診断の項目の中でも、特に強い印象を残すのはバリウム検査です。あの白いどろりとした液体を飲んで、その後白い便が出てくることに衝撃を受ける方は少なくないでしょう。 あまりの非日常さゆえ、健康診断後に 「バリウム検査が腸内細菌叢に悪影響を与えているのではないか?」 と心配される方もいるかもしれません。そこで今回は、バリウム検査が腸内細菌叢に与える影響についてお伝え

あなたの食の好き嫌いは実は腸内細菌に誘導されているかもしれない。

人間の健康に大きく影響を与えると言われている腸内細菌ですが、食の好みにまで腸内細菌が影響しているとしたら、あなたは信じられますか? こんにちは、onakademy編集部です。 今回の研究室の記事では、2022年に発表された腸内細菌と食に関する非常に興味深い研究を紹介します。 研究の背景 一部の寄生虫などの共生生物は宿主を肉体的・心理的に誘導することで自身の生存に有利に働く環境を能動的に作り出すことが知られています。 特に昆虫では有名な例が多いです。有名なものでは様々な

合成プレバイオティクスで大腸に酪酸を届ける

こんにちは、onakademy編集部です。これまでのonakademyの数回の配信では、基礎的な腸内環境の知識を中心にお伝えしてきました。これらの記事は図書室や談話室のマガジンに掲載されているので、興味のある方はそちらをぜひ覗いてみてください。 今回から度々投稿していく研究室マガジンについて少し説明させてください。 初回に配信した自己紹介記事でもご紹介したとおり、onakademyでは研究に親しんでいる方にもそうでない方にも、おなか(=腸内環境)の世界をお届けできればと思