リバウンドしないダイエットのカギは腸内細菌と二次胆汁酸にあり、という研究の話
ダイエットの大敵「リバウンド」におびえてますか?
減量後にはタンパク質と炭水化物の比率に気をつけタンパク質を多めに摂る[1]といった食事コントロールによるリバウンド対策も報告されていますが、今回は腸内環境に注目します。
二次胆汁酸とは
まずタイトルにもある二次胆汁酸について。
二次ということは一次があります。一次胆汁酸はヒトの肝臓で作られる脂肪の消化を助ける物質で、それが腸まで流れていくと腸内細菌によって変換され二次胆汁酸と呼ばれるようになります。
これまで二次胆汁酸が過剰にあると健康に悪影響を及ぼすと言われてきたのですが、二次胆汁酸にもいろいろな物質があり、最近では二次胆汁酸も種類によっては有益な効果をもたらすことがわかってきています。
特にウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid, UDCA)はコロナの重症化予防に期待されるなど注目されています[2,3]。
研究事例
この研究は、カロリー制限ダイエット後にリバウンドしてしまう場合に腸内環境では何が起きているのか?どうすればリバウンドを抑制できるか?について、マウスモデルで腸内細菌とUDCAの関与を調べたものです[4]。
偏った食生活や極端なカロリー制限が体に及ぼす影響
まず、カロリー制限食が続いたり高脂肪食が続くとマウスの腸内細菌叢の構成が変わってしまう事がわかりました。特に、腸内細菌Parabacteroides distasonisが減少し、これはUDCA量低下、エネルギー消費量の低下との関連が認められました。
つまり、偏った食生活や極端なカロリー制限は腸内細菌叢に影響するだけでなく、エネルギー消費量が低下し「太りやすくリバウンドしやすい体質」になっていたと言えます。
実はヒトでも、極端なカロリー制限ダイエット後には代謝が極めて低下することが知られています[5]。同時に、レプチンという食欲を抑えるホルモンの血中濃度が低下しいるため食欲が増加しており、極めてリバウンドしやすい状態になっているようです。誘惑に勝てないのもうなづけます。
UDCA(ウルソデオキシコール酸)がリバウンドを防ぐ?!
マウスの論文に話を戻しましょう。
カロリー制限の次はリバウンド状態を想定し、カロリー制限食の後に高カロリー食を食べさせました。このときP. distasonisとUDCAをエサに混ぜるとエネルギー代謝が改善され、高カロリー食でも体重増加が抑制されることがわかりました。
驚くべきことに、UDCAだけをエサに添加してもエネルギー代謝向上と体重増加抑制が確認されています。
もちろんこの研究はマウスを対象とした試験なのでヒトにも同じ効果があるかは不明です。とはいえ、脂の消化吸収を助ける一次胆汁酸が、腸内細菌によって二次胆汁酸に変換され、カロリー消費を助けるというプロセスにはびっくりしました。
心身と腸内環境が健康であれば、おいしく楽しく食べ続け
られるんだなぁ、と関心させられた論文でした。
参考文献
[1] Drummen M. et al. High Compared with Moderate Protein Intake Reduces Adaptive Thermogenesis and Induces a Negative Energy Balance during Long-term Weight-Loss Maintenance in Participants with Prediabetes in the Postobese State: A PREVIEW Study. J Nutr. 150(3), 458 (2020)
[2] Nagai M. et al. High body temperature increases gut microbiota-dependent host resistance to influenza A virus and SARS-CoV-2 infection. Nat Commun. 14(1), 3863 (2023)
[3] Okushin K. et al. Ursodeoxycholic acid for coronavirus disease 2019 prevention. J Intern Med. 295(1), 106-109 (2024).
[4] Li M. et al. Gut microbiota-bile acid crosstalk contributes to the rebound weight gain after calorie restriction in mice. Nat. Commun. 13(1), 2060 (2022)
[5] Fothergill, E. et al. Persistent metabolic adaptation 6 years after "The Biggest Loser" competition. Obesity24(8):1612. (2016)