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赤ちゃんのアレルギー体質は、お母さんのお腹の中にいるときから決まってしまうのか?
こんにちは、onakademy編集部です。
前々回の記事では、アレルギーの発症メカニズムの簡単な説明と、そこにどう腸内環境が関わっているのかについてご紹介しました。
その記事でもいくつか、アレルギーと腸内環境の関連を報告している研究をご紹介しましたが、今回は特に興味深い研究について解説したいと思います。この研究では、乳児のアレルギーと母親の健康状態、さらには腸内環境との関連性が示唆されています。
出生直後の乳児が排泄する暗緑色の便のことを胎便と呼ばれます。胎便には、成人の便と同様に、腸内細菌叢由来の代謝物質をはじめとする、腸内環境の情報が多く含まれています。
この研究では、胎便の解析を通じて、乳児の腸内細菌叢とアレルギーリスクとの間に関連があることが示されました。
研究の背景
近年、乳児におけるアレルギー発症率の増加が課題となっています。特にアトピーや食物アレルギーの増加が顕著です。以前の記事でご紹介した通り、これらのアレルギー疾患と腸内環境、そして免疫系との間には密接な関連があることが明らかになっています。
本研究では、胎便中の腸内細菌および代謝物質の解析をしています。特に、胎便の代謝物質プロファイルが腸内細菌叢の成熟過程とアレルギーリスクにどのように関与するかを重点的に調査しています。
研究対象として、カナダのCHILD(Canadian Healthy Infant Longitudinal Development )コホート研究に参加した979名の乳児の腸内細菌叢を分析しました。
なお、代謝物質の解析については、全体から100名を抽出して実施しています。ただし、この抽出群は性別や年齢、アレルギー症状を示す乳児の割合などの人口構成比において全被験者群を適切に評価できていることが確認されています。
胎便内の代謝物質の多さが腸内環境の成熟度と相関する
研究チームは腸内細菌叢のデータを機械学習で分析し、細菌の構成比から乳児の実年齢を高精度で推測できることを発見しました。
これは、腸内細菌叢の成熟度が実年齢と強く相関するということを示しています。
さらに、3ヶ月時点の比較調査により、アレルギー症状のある乳児は健常な乳児と比べて、腸内細菌叢の成熟度が有意に低いことが判明しました。
言い換えれば、アレルギーをもつ乳児では、腸内環境の成熟が実年齢に比べて遅れている状態にあると考えられます。
この発見を受けて、研究チームは腸内細菌叢の成熟を促進する因子を探るため、胎便内の代謝物質に着目しました。
その結果、代謝物質の多様性の高い乳児ほど、その後の細菌叢の成熟が進み、アトピー予防にも効果があることが明らかになりました。
重要な点として、胎便中の代謝物質には母親由来のものも含まれています。つまり、胎便中の代謝物質と乳児の腸内細菌叢の成熟度との関連は、乳児の腸内環境の基盤が既に妊娠中から形成され始めていることを示唆します。
これらの要素とアレルギーリスクとの関連性から、妊娠中の母親の腸内環境および健康状態が、乳児の腸内細菌の発達や免疫系の形成に影響を及ぼす可能性が示されました。
この研究は、アレルギー予防における妊娠期の介入の重要性を示す、非常に興味深い成果と言えます。将来の子供の健康のためにも、妊娠中の健康管理の重要性が改めて確認されたと言えるでしょう。
参考文献
今回ご紹介した研究はこちら↓
Petersen et al. A rich meconium metabolome in human infants is associated with early-life gut microbiota composition and reduced allergic sensitization. Cell Reports Medicine, 2(5), 100260 (2021).
(ヒト新生児の胎便中の豊富な代謝物質は幼年期の腸内細菌叢と関連し、アレルギー感作を減少させる)