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メタジェン社員インタビュー Vol.1
こんにちは!onakademy編集部の花映です!
今回はメタジェンの「人」にスポットを当て、研究員であり、onakademyの執筆メンバーであり、メタジェンの象徴のような存在であるいとうさんにインタビューしました。
彼はなぜ腸内環境を研究し、どんなことを考えているのでしょうか。
ーまず、メタジェンに入ったきっかけを教えてください
大学院の頃は超生命体という概念が好きでした。スイミーのように生き物の群れがまるでひとつの生き物のように振る舞ったり、ロボットをたくさん集め擬似的な群れをつくると、生き物ではないにも関わらずまるで生き物らしく振る舞う。単独では持ち得ない機能を示す集団を超生命体と呼びます。ロボットの群れをコントロールする手法の開発を通じて生き物らしさとは何か?を追求する研究をしていました。
日本学術振興会特別研究員としての研究期間を終えたら次はどんな研究やろっかなと紀伊国屋に入り浸っている時に、リバネスが発行していた中高生向けの研究紹介雑誌「someone」を手に取りました。その号は腸内環境特集で、福田さんのインタビューが掲載されていました。自分の体内に1μm程度の菌が1.5キロも集合し、それが宿主を操っているかもしれない、という発想にグッときました。手で触る事のできる超生命体(=うんこ)って面白いなと感じました。
また、ベンチャー企業をこれからつくるとのこと。よくわからんが面白そうだと感じたので、紀伊国屋で福田さんのメアドを調べてメールしました。雑誌のお会計よりも先にメールしていました。
ーいとうさんらしい(笑)でも、こんな熱いエピソードを聞くのは初めてです。
そうかも。
その1ヶ月後くらいに、学会かなにかのついでに鶴岡に来ました。北海道にいたから、羽田まで飛んだらそこから先はぜんぶ"ついで"。今思うと当時は腸内環境の事を何も知らないのに、初対面の福田さんに向かって「この領域はこんなに面白いんですよ!だから僕はやることにしました!」みたいな勢いだけのプレゼンを2時間くらいしたのを覚えています。
福田さんに日本学術振興会特別研究員の給与よりは払うよ、と言ってもらったので生きていけるなと思いメタジェンに入ることにしました。口約束だけだったからまわりがすごく心配してましたね。入社してから内定通知書を一応もらい、「内定したんだ」とそのとき実感しました。
リバネスのおかげでメタジェンに巡り会えました。※何回も言えってリバネスの丸さんに言われたから、言っとく(笑)
ーそもそもなぜ腸内環境に興味を持つようになったんですか?
高校生の時はラグビー部だったけど身体の線が細かったんです。筋トレも走り込みもし、1日5食や1杯2,000キロカロリーのウエイトゲイン用プロテインを飲んだりしていたのに体重がなかなか伸びませんでした。トレーニング強度が高すぎるのかもなどと考えていたけど、振り返るとおなかを下しがちでした。ある時、体重増加用アミノ酸サプリを摂ったら下痢しにくくなり2週間もしないうちに体重が増え、ベンチプレスの値も伸び、当たり負けしなくなるなど運動パフォーマンスが向上しました。食トレと思ってたくさん食べていましたが、単にバケツの底に穴が空いていたようです。
ーなるほど、わかりやすい!栄養素を吸収できないまま出て行っちゃってたってことですね。今現在、いとうさん自身の“おなか”はどうなんですか?
ゆるくなりがちな体質は相変わらず。最近は食事に気をつけることでコントロールできるようになりました。白米が好きで、趣味でお米コンテストの審査員もしています。僕の腸内細菌叢の4割を占めるプレボテラ(穀物が好きな菌)の影響だと思うことにしています。
ーメタジェンメンバーであることは自身の健康管理に活かせていますか?活かせているなら具体的にどんなことをしていて、どんな成果がありましたか?
メタジェンで最初の3年間に様々な臨床試験のうんこに触れまくりました。本当に濃密な日々で、たくさんの人、同じ人から何回分とか、延べ数千便をこの手で扱いました。めちゃくちゃ学びが深い時間でした。今もその時の経験から研究を立案しています。
ーこれはホントに羨ましいし貴重な経験ですね!
当時はラボにカンヅメで大量の検体を処理したりもしていたので、「うんこが迫ってくる」感覚でした(笑)
ただうんこを見ているだけでなく、DNAを抽出する過程でうんこをばらばらにしていくので、色・性状・食物残渣などいろんな情報や事象に遭遇して「うんこの分解能」も身につきます。社内の人であればうんこを見れば誰のものかわかるし、おなかの調子などもある程度予測がつきます。
ーこれは自分の目で見て手を動かしたいとうさんならではの強みですね
講演や一般の方とお話するときも、企業の人として接するとなんだかコミュニケーションが難しい場合でも、僕がうんこに造詣が深いことがわかるとすぐに心をひらいてくれるし、家族にも言ったことのない悩みを相談して頂けたりします。うんこの持つコンテクストの深みは未知数。「うんコミュニケーション」ですね。
健康管理の面では、自分自身の便を採取しまくっています。抗生物質で腸内細菌叢のバランスが崩れるとか、下痢してもあまり菌叢変わらないよ、とか、文献で目にするけどなんとなく都市伝説のように語られている話を菌叢に限らず様々なデータを合わせながらひとつひとつ自分自身のおなかで確かめています。
ーこれは研究と実生活をつなぐ上ですごく大事なことですね!逆に腸内環境やこの仕事の難しさを感じることはありますか?
正直あまり困ることはないですが、うんこが好きな人ばかりではないと知って驚きました。自分は教科書の端や帰り道の道路にうんこの絵を書いてばかりの小学生時代でした。そのままうんこのことを考えていたら30代も半ばになってしまいました。大体みんなそんなもんだと思っていたが、そうではないらしいですね。
ーでは、いとうさんにとって腸内環境の魅力・面白さとは?
複雑系のソフトマターであり、アクティブマターであること、食べ物で介入できることです。介入の効果を、早ければ翌日に便通として体感できます。様々難しそうな研究報告が目白押しなこの分野ですが、うんこがスッキリ出る事の継続がいちばん大切、というオチがついているところも好きですね。
ー複雑系のソフトマターであり、アクティブマター・・・(笑)なんとなくわかる気はするんですけど、もう少し噛み砕いていうと?
要するに、柔らかい物質で、菌や食べ残しなどいろんなものが入っていて、単一の化合物からできているわけではないし、構成要素に生き物が入っていて、それが機能しているというのがかっこいい。うんこはかっこいいんです。
ーなるほど!「かっこいい」という表現なんですね!
最後にいとうさんの夢や、メタジェンや腸内環境を通してやりたいこと、チャレンジしてみたいことはなんですか?
僕はうんこが集まってくる所だからメタジェンにいます。うんこの研究がしたい。福田さんが腸内細菌の研究者だし、バイオインフォマティクスの領域には山田さんがいる。自分は理学・物質化学を背景に、腸内細菌と代謝物質にこだわらず、いろ、つや、におい、かたち、といった物理化学的性質とその時系列変化に着目したい。うんこの事はいとうに聞けと言われるようになりたい。
うんこを通じてヒトの感覚を拡張したいと思っています。ヒトの知覚を拡張してうんこのスッキリ感を100倍に増加させたりしてみたいです。
あと、「どんなうんこしてるんですか?」ってアイドルや有名人に聞いてみたい。アイドルはうんこしないらしいから妄想になってしまうけど(笑)、研究を通じた知見を活かしてアイドルのうんこをプロデュースしたいです。
ーいとうさんや私は自分でコントロールして「うんこをつくる」という感覚を体得してますもんね。「How are you?」的に「どんなうんこしてるんですか?」っていう挨拶ができたり、うんこのトータルプロデュースができたらいいですね!ありがとうございました!