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喫煙者要注意!腸内環境からタバコの影響を考える

こんにちは、onakademy編集部です。

腸内環境は何から影響を受けていると思いますか?

過去の記事で「腸内環境に最も影響するのは食習慣である」ということはお伝えしていましたね。

でも、食事以外の影響がないかと言われると、もちろんそんなことは有りません。

そこで、今回は身近な「腸内環境に影響するもの」として、タバコを吸ったらどうなる?について触れていこうかと思います。


タバコを吸うと腸内環境はどうなる?

年々価格が上昇しているタバコですが、それでもやめない愛煙家がみなさんの周りにもいませんか?

「肺がんや咽頭がんをはじめとしたがん発症のリスクが高まる」、「体力が落ちる」、「妊婦が吸うと生まれてくる子供に悪影響」など、様々なリスクが問題視されているタバコですが、実は腸内環境にも影響することが徐々にわかってきました。

でも、腸内環境に影響するよ!とだけ言われても「ふーん、そっかぁ」と思うだけの方も多いのではないでしょうか。

しかし、薄着になるこの時期に気になる「体型」や「太りやすさ」に表れる形で腸内環境が影響を受けているとしたら、どうしますか?

タバコは、その人を「太りやすい」体質にしてしまう

そもそも、基本的にタバコを吸うと食欲が減退することから、喫煙者は痩せていることが多いとされています。その一方で、喫煙者がタバコを吸わなくなると、将来的に非喫煙者と比べても肥満リスクが高まるということが複数の研究で示されています[1,2]。

すなわち、タバコを吸うことで太りやすい体質になってしまうのです。

この「タバコにより太りやすくなる」現象(専門用語ではSmoking-cessation-induced weight gain, SCWGと言います)が実は腸内環境に由来して起きている可能性が近年の研究で明らかになってきているのです。

タバコは腸内環境に影響することで太りやすい体質を生み出している

タバコ自体が腸内環境に影響することについては複数の研究で示唆されており、喫煙や禁煙が腸内フローラ(腸内細菌の群集)の組成を変えたり[3]、その変化に伴う腸内代謝物質への影響により疾患リスクを高めていることが報告されています[4]。

では「タバコに由来した太りやすさは腸内環境によるものなのか?」という問いに対してですが、ある研究で行われた動物実験により、腸内環境が密接に関わっていることが示されています[5];

  1. マウスに抗生物質を与えて腸内細菌を死滅させておくと、腸内細菌がいるマウスと比べてタバコの煙を吸わせても太りにくい

  2. タバコの煙を吸わせたマウスの腸内フローラを「タバコの煙を一度も吸ったことのないマウス」に移植すると、太りやすくなる

特に「2.」の試験が非常に面白いもので、これまで全くタバコの煙に触れていない個体においても、吸っていた個体の腸内フローラが移植されることで太りやすい体質が再現されているのです。

タバコを吸うことで生じる腸内フローラの具体的な変化や、そこから腸内代謝物質を介して太りやすくなるメカニズムの仮説などについては小難しいので本記事では割愛しますが、要は「タバコの煙を吸った生物の腸内環境は、その生物を太らせやすい腸内環境になっている」ということですね。

将来太りたくないのなら、タバコを吸っていない腸内環境を

そもそも肉体的な健康の視点ではほとんどメリットの無いタバコ、吸わないに越したことは有りませんが、それでも吸わずにはいられない方もいますよね。

そんな方は、もし将来禁煙した際には「自身が太りやすい体質に変わっている可能性があること」に気をつけてください。

残念ながら、現状タバコによって変わってしまった腸内環境を元に戻す手段というのは確立していません。

また、腸内環境は個々人の中では比較的安定しており、変えるのにはなかなか時間と労力がかかります。ヨーグルトを食べたらその次の日に腸内環境が変わっていることなどが無いのと同様に、一度タバコを吸って腸内環境が太りやすいものに変わってしまうと、それを改善するのには非常に時間がかかってしまいます。

タバコのデメリットは主に吸っているときのリスクが論じられていますが、吸うのをやめたあとにも腸内環境を介してデメリットが継続してしまうリスクを、是非覚えておきましょう。

参考文献

[1] Dare, S. et al. Relationship between smoking and obesity: a cross-sectional study of 499,504 middle-aged adults in the UK general population, PLoS One, 10(4):e0123579 (2015)
[2] Carreras-Torres, R. et al. Role of obesity in smoking behaviour: Mendelian randomisation study in UK Biobank, BMJ. 361:k1767 (2018)
[3] Biedermann, L. et al. Smoking cessation induces profound changes in the composition of the intestinal microbiota in humans, PLoS One, 8(3):e59260 (2013)
[4] Bai, X. et al. Cigarette smoke promotes colorectal cancer through modulation of gut microbiota and related metabolites, Gut, 71(12):2439 (2022)
[5] Fluhr, L. et al. Gut microbiota modulates weight gain in mice after discontinued smoke exposure, Nature, 600(7890):713 (2021)

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