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あなたの食の好き嫌いは実は腸内細菌に誘導されているかもしれない。

人間の健康に大きく影響を与えると言われている腸内細菌ですが、食の好みにまで腸内細菌が影響しているとしたら、あなたは信じられますか?

こんにちは、onakademy編集部です。

今回の研究室の記事では、2022年に発表された腸内細菌と食に関する非常に興味深い研究を紹介します。


研究の背景


一部の寄生虫などの共生生物は宿主を肉体的・心理的に誘導することで自身の生存に有利に働く環境を能動的に作り出すことが知られています。

特に昆虫では有名な例が多いです。有名なものでは様々な昆虫に共生するボルバキアという菌は自身の生存確率を高めるため、オスの宿主をメス化するなどして集団内のメスの割合を増やす「オス殺し」の細菌として知られています[1]。

また、カタツムリに寄生するロイコクロリディウムという寄生虫はカタツムリを操り草木の高い位置などの見晴らしの良い場所に移動させ、鳥に見つけられやすくすると言われています[2]。

このように、生存戦略などのために宿主の行動をある程度制御する寄生生物はいくつか報告がなされています。

宿主との利害関係は異なりますが、腸内細菌も共生生物の一種であり、宿主であるヒトの行動選択に何かしらの影響を与えていても不思議ではありません。

そんな可能性を実際に検証した研究が2022年に報告されました。

研究の内容


この研究では、無菌マウス(腸内細菌を除去したマウス)に対して、もともと異なる食性(肉食・雑食・草食)を持つ3種類の齧歯目げっしもくの腸内細菌叢を移植しました(注1; n= 30、各群10匹ずつ)。

(注1)
肉食:ミナミバッタマウス($${\textit{Onychomys torridus}}$$)
雑食:シロアシマウス($${\textit{Peromyscus leucopus}}$$)
草食:モンタナハタネズミ($${\textit{Microtus montanus}}$$)

腸内細菌叢の移植後、7日間の順応期間を経て腸内細菌叢を移植したマウスを高タンパク食と低タンパク食(重量あたりのカロリー量は同一)を自由に選べる環境下に移動させ、11日間にわたりどのような食事を選択するようになるかを評価しています。

その結果、草食齧歯目げっしもくの菌叢を移植したマウスでは、他の群と比較して炭水化物の摂取量が低いことが示されました。なお、タンパク質摂取量に大きな差は認められませんでした。

また、炭水化物の摂取傾向とセロトニンの前駆物質であるトリプトファンの代謝に相関が認められました。

このことから、マウスの食事選択行動の変化には腸内細菌のトリプトファン代謝が関連していると著者らは考察しています。

また、この食事選択の傾向はマウスを食事選択が可能な環境に置いてから1週間が経過した時点からより顕著に起きることを観察しており、腸内環境での代謝に紐づいた食事選択への影響には時間を要することを考察しています。

過去には、砂糖への嗜好性が腸内環境に影響を受けることを明らかにした研究も報告されているように[3]、宿主の行動選択に腸内環境が少なからず介在していることが近年徐々に示唆されてきています。

例えば海外旅行に行った際に無性に和食が食べたくなったり、長く一人暮らしを続けているとふと実家のご飯が恋しくなる瞬間などを経験したことはありませんか。

そのような現象もただの気のせいではなく、腸内細菌がそういう食事を欲している、ということなのかもしれませんね。

ちなみに私は急にラーメンが無性に食べたくなる衝動に駆られることがあります。

そういうときは自分を抑えずに、「これも腸内細菌が欲しているから仕方がないんだ!」と思うようにしています。

それでは、次回の記事でまたお会いしましょう。

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参考文献

The gut microbiome influences host diet selection behavior
(腸内細菌叢は宿主の食事選択行動に影響を与える)
Trevelline, B. and Kohl, K. The gut microbiome influences host diet selection behavior. PNAS 119(17), e2117537119 (2022).

[1] Katsuma, S. et al. A Wolbachia factor for male killing in lepidopteran insects. Nat Commun 13, 6764 (2022).
[2] Wesołowska, W. and Wesołowski, T. Leucochloridium sporocysts and snail host behaviour. J Zool, 292: 151-155 (2014).
[2] Tan, H. et al. The gut–brain axis mediates sugar preference. Nature 580, 511–516 (2020). 


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