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体力から筋力まで!基礎体力を腸内環境で高めよう!

こんにちは、onakademy編集部です。

腸内環境からもたらされる効果。これまで私共も記事でいくつか取り上げてきましたが、皆さんはどういったものをイメージされますか?「病気の予防」や「体重減少(ダイエット)」でしょうか。

これらの効果は大変素晴らしいものですが、今現在体調に目立った困りごとがない人からすると、正直腸内環境を整えるモチベーションには繋がりにくいのではないでしょうか。

ですがもし腸内環境があなたの基礎体力を高めて、日々のバイタリティをより高めてくれたらどうでしょう?
エナジードリンクを飲まずとも活力がみなぎり「バイトや趣味にもっと没頭」できたり「休日に仕事の疲れを気にせず家族と過ごせる」なんて嬉しいですよね。

今回はそんな「もし」が実際にアリそうかも?ということを最新の研究を交えてご紹介します。


腸内環境がもたらす「体力」

まず活力ある生活に必要なのは体力、持久力ですよね。何事も体力がなければ取り組む気にもならないものです。

そんな持久力ですが、実は腸内環境によって向上する可能性が示唆されています。

2023年に日本の研究グループで報告された研究では、α-シクロデキストリン(αCD)という食物繊維を摂取することによって、ランニングなどの持久運動パフォーマンスを向上出来ることが示唆されています[1]。

これは$${\textit{Bacteroides uniformis}}$$という菌が腸にいる場合にαCDを摂取すると、腸内で短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸という物質を産生し、それが肝臓に届くことで肝臓でのエネルギー生成を促進したためであると考えられています。
これは「腸内細菌」と「それらがエサにできる成分」の組み合わせを発見したことで、その腸内細菌からの有益な効果をより効率的に享受出来るようになった事例とも言えるでしょう。

ちなみにこの研究、αCDを飲んだ人ではエアロバイクでのパフォーマンスが上がっただけでなく、運動後の疲労感も改善しているのです!
つまり、適切に食物繊維を摂取しただけで体が疲れにくく、体力が高い状態になっているんですね。

この$${\textit{B. uniformis}}$$という菌は日本人の多くの人が持っている菌ですので、多くの人がこの恩恵により体力UPが期待できるかもしれません。

他にも、アメリカのグループの研究では、ボストンマラソンの走者の腸内細菌を調べたところ、$${\textit{Veilonella}}$$という腸内細菌が競技後に増えており、この菌をマウスに飲ませたら持久力が向上したことを報告しています[2]。

このように、腸内環境が体力向上・抗疲労のポテンシャルを有することは複数の研究で示されているんですね。
現在では腸内環境をターゲットとした抗疲労食を開発できないか、という研究も進んでいます[3]。

エナジードリンクを飲むより即効性は無いかもしれませんが、より健康的に活力を得られるため、是非とも腸内環境を整え体力づくりをしていきたいものですね。

腸は筋肉も維持してくれる?!

もう一つ活力ある生活に欠かせないのが筋肉です。

20代ごろまでは若さでどうとでもなりますが、30代に入り急に体が重くなったと感じたり、肩や腰が痛くなったと嘆いている人は周りにいませんか?
私の周りには溢れています(苦笑)。

とはいえ、何もしていないと加齢に伴い筋肉はどうしても衰えます。筋肉減弱(サルコペニア)も加齢で有症率が増加しますので、こと高齢化が進む日本において、筋肉量を維持することはこれから非常に重要になってくることでしょう。

そんな筋肉の維持ですが、これまた腸内環境が貢献してくれる可能性が報告されています。

ある研究ではグアーガム分解物(PHGG)をマウスに摂取させると、腸内での短鎖脂肪酸が増え、骨格筋量が有意に増えたことを報告しています[4]。これは短鎖脂肪酸により抗炎症作用や脂肪酸代謝の調節などの機能がもたらされたたことで生じたのではないかと考えられています。

また別の研究では、サルコペニア患者では$${\textit{Prevotella copri}}$$($${\textit{P. copri}}$$)という腸内細菌が健康な人と比べて少ないことを発見し、その菌を高齢マウスに摂取させてみたところ、筋量や筋力が向上したことを報告しています[5]。この菌は腸内で分岐鎖アミノ酸(BCAA)という筋肉づくり・維持に欠かせないアミノ酸を産生してくれるため、この菌が少ない人ではBCAAがあまり作られず、筋力が維持できずにサルコペニアになったのではないかと考えられています。

ちなみにこの研究では菌の代わりに高齢マウスにBCAAを直接飲ませた場合にも筋量・筋力が向上することを確認していますが、この時の効果は$${\textit{P. copri}}$$を飲ませた時と 大きく差がなかったことが示されています。
BCAAは筋トレをする人たちがトレーニング前後に飲むサプリメントとして有名ですが、それと同等の効果が腸内細菌から得られていると考えるとすごいですね。

このように実は腸内細菌は筋肉を維持することにも貢献しているのです。

これを読んで$${\textit{P. copri}}$$が自分も欲しい!と思った人も少なからずいるのではと思いますが、残念ながらこの菌はまだプロバイオティクスとして販売された実績が無いため、持っていない人がこの菌を導入するのはハードルが高いです。

もし腸内フローラ検査をしたことが有り、$${\textit{P. copri}}$$(検査ではよくプレボテラ菌と表示されています)をお持ちだった人は、この菌は穀物類などを食べることで増えることが期待できる菌ですので、筋肉を維持するためにも是非お腹で育てていきましょう。

体も動かし、腸も育てよう!

さて、腸内環境が体力作りや筋肉維持に貢献している可能性が明らかになってきていることを紹介しましたが、いかがでしたか?

念の為にお伝えしますが、この記事で言いたいことは「腸内環境を整えれば運動をせずとも体力や筋力がつくという」ということでは有りません。
体力や筋肉をつけるのには運動や食事が非常に重要であることに変わりはありません。

ですが、日々の運動や食事に加えて、食物繊維を摂取して腸内環境を整えることで、そのトレーニングの効果を増強できたり、あまり運動できない時期の体力維持ができたら、すごく有益だと思いませんか?

また、忙しい日々を過ごしている皆さんの中には、なかなか運動に手を出せていない人もいらっしゃると思います。そんな人は、まずは少しでも体力をつけるために腸内環境を意識してみてはいかがでしょうか。

参考文献

[1] Hiroto, M. et al. Bacteroides uniformis and its preferred substrate, α-cyclodextrin, enhance endurance exercise performance in mice and human males. Sci. Adv. 9,eadd2120 (2023).
[2] Scheiman, J. et al. Meta-omics analysis of elite athletes identifies a performance-enhancing microbe that functions via lactate metabolism. Nat Med 25, 1104–1109 (2019).
[3] Li, Y. et al. Gut microbiota as a potential target for developing anti-fatigue foods. Critical Reviews in Food Science and Nutrition 63(18), 3065–3080. (2021).
[4] Okamura, T. et al. Partially Hydrolyzed Guar Gum Suppresses the Development of Sarcopenic Obesity. Nutrients 14(6), 1157 (2022).
[5] Liu X. et al Prevotella copri alleviates sarcopenia via attenuating muscle mass loss and function decline, Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle 14, 2275–2288 (2023).



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